うつ病は、健康な状態にも起こる気分の落ち込みと比較して、①程度が強く、②持続時間が長く、③生活で支障が出ることが特徴の病気です。職場や学校、コミュニティでの人間関係、親子や夫婦間での問題、介護、身近な人(ペット)との別れ、進学や就職、職場での業務の負担、配置換えなど、日常生活ではさまざまなストレスが起こりえます。そうした外的、内的なストレスの中、心身の不調が出現してくることがあります。
日本でのうつ病の生涯有病率は6%程度で、若年者、中高年者、高齢者いずれの年齢でも発症します。また、女性は男性よりも生涯有病率が約2倍であるとも言われています。うつ病の約57%には不安症を合併しているといわれ、うつ病の約15%に依存性パーソナリティ、約9%に強迫性パーソナリティ、約10%に境界性パーソナリティの背景があると報告されています。また、身体疾患があればうつ病の有病率が高くなります。
(1) 疲労感、気力の減退
(2) 食欲不振・体重減少、過食
(3) 睡眠障害
(4) 自律神経症状(頭痛、肩こり、背部痛、腰痛、めまい、便秘、性欲減退等)
(1) 抑うつ気分(落ち込み、くよくよ考える、悲哀感、希望がもてない等)
(2) 興味・関心や喜びの喪失(仕事/学業/家事への関心の低下、趣味に興味を持てない等)
(3) 思考力の低下(集中力/決断力の低下、切り替えができない、自責の念、無価値観等)
最近に生じたストレスや環境の変化(職場、家庭、学校、生活、人間関係)、被養育環境の問題(ケアの低さ)、発症時点でのサポート不足等がうつ病の発症危険因子であると報告されています。また、うつ病の近親者は、一般人口よりうつ病の発症頻度が高いと確認されています。
十分な休養をとり、ゆっくりと食事や睡眠のリズムをつくっていくことが大切です。また、自分が苦しんでいる症状や状態を理解し、それらの生物学的要因に目を向けることも重要です。それぞれの症状や段階にあわせた薬物療法があり、適切に行われれば一定以上の効果が期待できます。治療薬としては、不安や疲れを軽減する抗不安薬、セロトニン等脳内の神経伝達物質を調整する抗うつ薬、睡眠薬、抗精神病薬等があります。さらには、診察や心理検査を通して、自分の心と身体を不快にさせている「思い込み、決めつけ、反応の仕方、こわだり」に気付き、より安定した心の状態(成熟)につなげていきます。
双極性障害は、健康な状態にも起こる気分の浮き沈みと比較して、
①程度が強く、②持続時間が長く、③生活で支障が出ることが特徴の病気です。
うつ病相のほかに、自分ではコントロールできないほどの躁病相が出現します。
我が国の生涯有病率は0.4%といわれていますが、うつ病の治療経過中に軽躁病相、躁病相が明らかになってくることがあります。
一卵性双生児と二卵性双生児の一致率の差を元にした遺伝率の研究では、双極性障害の遺伝率はうつ病と比較して高く、遺伝的要因と環境的要因が複雑に相互関係をつくり発症すると推定されます。現実主義的で周囲の人々や状況に同調し、社交的、親切、また逆に寡黙、陰うつなどの特徴のある循環気質という性格に多いという説があります。
うつ病相の他に、あるいは入り交じり、躁病相が出現します。
躁病相の症状
(1)過度の自尊心あるいは誇大的思考
(2)睡眠欲求の減少
(3)多弁
(4)考えが次々に浮かぶ
(5)注意の散漫
(6)目標指向性の行動が高まる、活動性の亢進
(7)無分別な行動(浪費、粗暴な運転、性的逸脱行為等)
再発を繰り返す症例が90%以上を占めることから、再発予防が治療上たいへん重要です。
また、自殺リスクが高いことも注意が必要です。こうした点からも、本人の病気に関する理解を促し、各病相よりも治療経過を重要視した治療となります。薬物療法としては気分安定薬と呼ばれるものが基本となります。
また、新規の抗精神病薬も併用あるいは単独で使用されることもあります。
Copyright © ITAMI TENJINGAWA HOSPITAL. All rights reserved.